特定看護師とは?認定看護師との違い

特定看護師とは?認定看護師との違い

特定看護師とは?

【特定看護師とは?】(短縮動画解説)

特定看護師とは、「特定行為に係る看護師の研修制度」(特定行為研修)を修了すれば、特定行為と認められた38行為については、看護師の自らの判断でその行為の実施を許されるというものです。

特定看護師は、2015年10月にスタートした制度で、通常、看護師が診療の補助を行う場合、基本的に医師の具体的な指示を受ける必要があります。

しかし、現場でいちいち医師の指示を受けなければならないと行為ができないとなると、患者さんへの処置が遅れてしまう事にもなりかねません。

そこで、医師の包括的指示の下、独自の裁量で動く看護師、いわゆる「特定看護師」が必要になるというわけです。

特定看護師は、2025年度までに10万人を目標にしていますが、2020年7月時点で、修了者総数は2,646名(修了者延べ人数:17,982名)にとどまっています(※1)。

特定看護師になるための研修カリキュラム

研修カリキュラムは、「共通科目(315時間)」と「区分別科目」で構成されています。

区分別科目は、特定行為区分(38行為を21区分に分けている)単位で受講可能です。

38行為は以下の通りです。

  • 経口用気管チューブ又は経鼻用気管チューブの位置の調整
  • 侵襲的陽圧換気の設定の変更
  • 非侵襲的陽圧換気の設定の変更
  • 人工呼吸管理がなされている者に対する鎮静薬の投与量の調整
  • 人工呼吸器からの離脱
  • 気管カニューレの交換
  • 一時的ペースメーカの操作および管理
  • 一時的ペースメーカリードの抜去
  • 経皮的心肺補助装置の操作および管理
  • 大動脈内バルーンパンピングからの離脱を行うときの補助の頻度の調整
  • 心嚢ドレーンの抜去
  • 低圧胸腔内持続吸引器の吸引圧の設定およびその変更
  • 胸腔ドレーンの抜去
  • 腹腔ドレーンの抜去(腹腔内に留置された穿刺針の抜針を含む。)
  • 胃ろうカテーテルもしくは腸ろうカテーテル又は胃ろうボタンの交換
  • 膀胱ろうカテーテルの交換
  • 中心静脈カテーテルの抜去
  • 末梢留置型中心静脈注射用カテーテルの挿入
  • 褥瘡又は慢性創傷の治療における血流のない壊死組織の除去
  • 創傷に対する陰圧閉鎖療法
  • 直接動脈穿刺法による採血
  • 橈骨動脈ラインの確保
  • 急性血液浄化療法における血液透析器又は血液透析濾過器の操作および管理
  • 持続点滴中の高カロリー輸液の投与量の調整
  • 脱水症状に対する輸液による補正
  • 感染徴候がある者に対する薬剤の臨時の投与
  • インスリンの投与量の調整
  • 硬膜外カテーテルによる鎮痛剤の投与および投与量の調整
  • 持続点滴中のカテコラミンの投与量の調整
  • 持続点滴中のナトリウム、カリウム又はクロールの投与量の調整
  • 持続点滴中の降圧剤の投与量の調整
  • 持続点滴中の糖質輸液又は電解質輸液の投与量の調整
  • 持続点滴中の利尿剤の投与量の調整
  • 抗けいれん剤の臨時の投与
  • 抗精神病薬の臨時の投与
  • 抗不安薬の臨時の投与
  • 抗癌剤その他の薬剤が血管外に漏出したときのステロイド薬の局所注射および投与量の調整
  • 創部ドレーンの抜去

これまでも看護師が現場の状況に応じて行ってきたものですが、この特定行為研修を修了すれば、医師の具体的な指示を受ける必要はなくなります。

指定研修機関は、大学、大学病院、大学院など様々ですが、内容、都道府県、特定行為区分によって、変わります。

日本看護協会のHPで検索可能です。

研修は4つの方法で行われます。

  • 自宅学習(eラーニング)
  • 筆記試験
  • 集合研修(スクーリング)
  • 臨床実習

特定行為を行うのに必要な手順書とは?

特定行為は、あらかじめ医師の包括的な指示を受けた看護師が「手順書」に基づいて実施することになります。

手順書は特定行為の実施上の指針となるものです。

対象となる患者や病状の範囲、特定行為の内容、指導医への報告の方法などが含まれています。

特定看護師に期待されてること

迅速でタイムリーな判断が必要な救命救急センター、医師が不足している病院・医療機関、医師の目が届きにくい在宅医療の現場などで特定看護師が求められています。

医師の視点を持つ特定看護師が、患者さんに貢献することが期待されているのです。

特定看護師と認定看護師の違いのまとめ

特定看護師と認定看護師の違いまとめ
特定看護師 認定看護師
目的 急性期医療から在宅医療等を支えていく看護師を計画的に養成すること 水準の高い看護実践のできる認定看護師を社会に送り出すことにより、看護ケアの広がりと質の向上を図ること
資格 ×(修了証)
管轄機関 厚生労働省 一般社団法人日本看護協会
研修機関 各指定機関 看護系の教育機関
研修期間 315時間+15~72時間 6ヶ月(615時間以上)
費用目安(トータル) 60~90万円 約100万円
認定試験 なし あり

特定看護師の転職市場での価値は?

特定看護師の人数は2020年10月の段階では、認定看護師より少なく、看護師の転職市場においても珍しい存在です。

特定行為が独自の裁量で判断できるメリットは、転職の面接等で特にその行為を含む診療科を希望する場合には、プラスの評価になるでしょう。

しかし、デメリットもあります。

特定看護師は研修を修了しているものの、資格としての効力を持っていません

したがって、転職後の職場の待遇として「資格手当」が別に出るかどうかとなると、専門看護師や認定看護師よりも難しいかもしれません。

特定看護師に向いている人

特定看護師に向いている人
・看護師の視点だけでなく、医師の視点を持ちたい人
・主体的に判断し、患者さんの役に立ちたい人
・患者さんの治療に貢献している実感を持ちたい人

特定看護師のまとめ

特定看護師のまとめ
・特定看護師は、在宅医療等を支えていく看護師を計画的に養成するために作られた。
・特定看護師とは、特定の行為に関して、医師の包括的指示の下、独自の裁量で動くことのできる看護師のことである。
・特定行為は、21区分38行為に分かれており、研修は指定研修機関で、自宅学習(eラーニング)、筆記試験、集合研修(スクーリング)、臨床実習の方法で行われる。
・研修期間は315時間+15~72時間、費用はトータルで60~90万円程必要になる。
・終了すると厚生労働省の修了証をもらえるが、資格ではない。
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