専門看護師と認定看護師
専門看護師と認定看護師、いずれも公益社団法人日本看護協会の資格認定制度です。
【専門看護師と認定看護師の違いは?】簡単解説動画
専門看護師は、13領域の「専門看護分野」のいずれかで高度な知識と技術を身につけ、「看護の教育指導者の役割」を担い、認定看護師は、21領域ある「認定看護分野」のいずれかで熟練した知識と技術を身につけ、「看護のスペシャリスト」としての活躍を期待されます。
専門看護師は2019年12月時点で全国に2,519人(※1)、認定看護師は2020年10月1日時点で20,721人います。
専門看護師と認定看護師は日本看護協会のサイトで検索することが可能です。
看護師がキャリアアップのために取得したい資格として、マイナビ看護師のアンケート結果(※2)でトップを争うのが、認定看護師と専門看護師です。
専門看護師は看護師の教育・指導的役割を担うエキスパート
専門看護師は、日本看護協会が認定する資格制度です。
13領域の「専門看護分野」が特定されており、そのいずれかにおいて、高度な知識と看護技術を身に付け、施設や地域の保健医療福祉の発展や看護学の向上に貢献することが期待されています。
13領域の「専門看護分野」
がん看護、慢性疾患看護、感染症看護、精神看護、老人看護、在宅看護、急性・重症患者看護、母性看護、地域看護、小児看護、家族支援、遺伝看護、災害看護
求められる役割は幅広く、卓越した臨床看護を実践するほか、ケア提供者へのコンサルテーション、保健医療福祉関係者のコーディネーション、看護に関わる倫理問題の解決、看護の向上を図るための教育活動や研究活動が含まれています。
専門看護師の活躍の場は?
病院、大学などの教育現場、訪問看護ステーションを中心に様々な施設で活躍中です。
専門看護師になるには?
実践経験が通算5年以上(うち3年は専門看護分野の実務経験)あり、看護系大学院修士課程を修了し、日本看護系大学協議会が定める専門看護師教育課程基準の所定の単位を取得したうえで、認定審査をパスすれば資格を取得することができます。(※3)
大学院に2年通うことが必須条件です。
専門看護師にかかる費用は?
大学院によってもかなりの費用の差がありますが、2年間の大学院費用だけで200万円前後必要になります。
しかし、病院によっては資格取得支援制度、奨学金制度のある場合もありますので、確認するとよいでしょう。
専門看護師の合格率は?
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
2019年 | ? | 319人 | ? |
2018年 | 257人 | 196人 | 76.3% |
2017年 | 303人 | 238人 | 78.5% |
(日本看護協会資料より作成)
専門看護師は認定看護師よりも難易度が高いです。
時間と費用もかかりますので、計画を立てて資格取得を目指しましょう。
専門看護師の待遇と転職
専門看護師は患者さん以外にその家族や医療関係者、地域社会にも関わることができる資格です。
もちろんチーム医療でも重宝されるでしょう。
ただし、専門看護師の資格があるからと言って、必ずしも報酬アップには繋がるとは限りません。
「2019年度専門看護師活動実態調査結果(第 1 報)」によると、毎月の資格手当の支給があるのは30.9%,で、「5,000~1 万円未満」が 42.7%と最も多く、次いで「3,000~5,000 円未満」19.4%、「1~1.5 万円 未満」15.8%の順でした。
そうとはいえ、国立病院機構、医療法人系の病院での資格手当支給率は高くなっています。
転職する際は、資格手当の出る病院や医療機関を選択するとよいでしょう。
認定看護師は特定看護分野のスペシャリスト
認定看護師は日本看護協会が認定する資格制度で、現在、21領域ある「認定看護分野」から選んだ特定の看護分野において、熟練した知識と看護技術を用いて高いレベルの看護ケアを展開できる看護師の養成を目的としています。
現行の認定看護師は2026年度に終了し、2020年度から新たな認定制度が始まります。
21領域ある「認定看護分野」(2026年度で教育終了)
救急看護、皮膚・排泄ケア、集中ケア、緩和ケア、がん化学療法看護、がん性疼痛看護、訪問看護、感染管理、糖尿病看護、不妊症看護、新生児集中ケア、透析看護、手術看護、乳がん看護、摂食・嚥下障害看護、認知症看護、小児救急看護、脳卒中リハビリテーション看護、慢性心不全看護、慢性呼吸器疾患看護、がん放射線療法看護
新たな認定看護19分野「認定看護分野」(2020年度から教育開始)
感染管理、がん放射線療法看護、がん薬物療法看護、緩和ケア、クリティカルケア、呼吸器疾患看護、在宅ケア、手術看護、小児プライマリケア、新生児集中ケア、心不全看護、心不全看護、生殖看護、摂食嚥下障害看護、糖尿病看護、乳がん看護、認知症看護、脳卒中看護、皮膚・排泄ケア
(認定看護師教育に特定行為研修あり)
一般の看護師の模範となるような臨床業務を実践するほか、技術指導やコンサルテーションにも対応することが期待されており、実践、指導、相談できる現場を引っ張る「看護の職人」として活躍しています。
認定看護師になるには?
実務経験が5年以上(うち3年は認定看護分野の実務経験)ある看護師が、認定看護師教育機関で6ヶ月の課程を修了、さらに認定審査をパスすることにより資格を取得できます。(※4)
現行の認定看護師(A課程認定看護師)は特定行為研修を修了することで、新たな認定看護師(B課程認定看護師、特定認定看護師)へ移行します。
移行は2021年4月以降に可能です。
認定看護師になる費用は?
概算で200万円必要だと言われています。
資格取得に必要な費用が約100万円、その他家賃・宿泊、交通費、参考書、パソコン(ソフト)など諸費用が約100万円です。
しかし、病院・施設によっては認定看護師取得に関する支援制度がありますので、もし支援制度があれば利用するとよいでしょう。
認定看護師の合格率は?
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
2019年 | 1,496人 | 1,329人 | 88.8% |
2018年 | 1,480人 | 1,293人 | 87.3% |
2017年 | 1,671人 | 1,478人 | 88.5% |
(日本看護協会資料より作成)
3年間の合格率は平均で88%です。
看護師国家試験の合格率と大きくは変わりません。
しっかりと勉強すれば合格は十分に可能です。
認定看護師の待遇と転職
認定看護師は認定看護分野において、現場のスペシャリストとして重宝されます。
今の仕事を深堀りするには良い資格といえるでしょう。
ただし、認定看護師の資格も専門看護師同様、資格手当を出している医療機関は3割程度です。
支給額は「3000~5000円未満」34.6%、「5000~1 万円未満」19.5%、「1 万円以上」15.2%の順でした。
やはり国立病院機構、医療法人系の病院で資格手当支給率が高いです。
転職では看護師のキャリア、教育支援制度が整っており、活躍の場も期待できる医療法人系への転職がおすすめだと言えます。
専門看護師と認定看護師の違いのまとめ
専門看護師 | 認定看護師 | |
役割 | 実践・相談・調整・倫理調整・養育・研究 | 実践・指導・相談 |
分野 | 13分野 | 21分野(→19分野) |
ケアの対象 | 患者とその家族 | 患者 |
教育機関 | 看護系大学院(2年間) | 看護系の教育機関(6ヶ月) |
授業料(目安) | 約120万〜180万円 | 約60〜80万円 |
試験時期 | 毎年11月頃 | 毎年5月 |
試験内容 | 一次審査:書類審査 二次審査:看護実績報告書・筆記試験(論述式) |
筆記試験(マークシート方式・四肢択 |
試験時間 | 120分 | 100分 |
費用 | 審査料振込:51,700円(税込) 認定料振込:51,700円(税込) |
審査料振込:51,700円(税込) 認定料振込:51,700円(税込) |
専門看護師の方が認定看護師よりも難易度は高いと言えるでしょう。
また専門看護師は、2年間大学院に通う必要がありますので、認定看護師に比べると敷居も高くなっています。
資格取得すれば、専門看護師、認定看護師は特定看護分野のエキスパート、スペシャリストとして認められ、重要なポジションを任せられる可能性が高くなるでしょう。
ただし、資格取得のためのハードルは専門看護師、認定看護師ともに高いため、キャリアアップのための支援制度や休職制度があるかどうかを病院・施設に確認することをおすすめします。
『日本看護協会の資格認定制度について (制度の現状)』(日本看護協会)
※2
『看護師転職お役立ちガイド』(マイナビ看護師)
※3
『専門看護師』(日本看護協会)
※4
『認定看護師』(日本看護協会)