訪問看護ステーションの訪問看護師の転職と働き方
【訪問看護師の転職 訪問看護ステーションでの働き方】(簡単解説動画)
看護師の転職市場で訪問看護師の需要はあります。
看護職員の就業場所としてはわずか4%(2019年)ですが、今後、ますます必要とされていることは間違いありません。
そこで今後、増えることが決まっている訪問看護師の仕事・転職と訪問看護ステーションでの働き方についてまとめました。
まだまだ不足している訪問看護師
全国で訪問看護師はまだまだ不足しています。
公益社団法人日本看護協会によると、訪問看護ステーションの求人倍率は施設種類別の中でも最も高く、2.91倍(※1)でした。
ちなみに訪問看護ステーションは30歳代の就職率が高いことが特徴です。
高齢社会が進行する中、在宅医療や介護サービスの重要性はさらに高まっています。
国の試算によると、2025年には15万人必要だと試算されていました。
日本訪問看護財団によると、12万人(暫定値)が見込まれ、ワークライフバランス(WLB)を考えた場合、13万人必要と試算されています。
しかし、現状、全国の訪問看護ステーション数は10,577ヵ所(※3)、訪問看護を実施する病院・クリニックは1480ヵ所です。
訪問看護ステーションには5人未満の看護職員がしかいない事業所が6割にのぼる統計結果から、まだまだ不足していることは間違いありません。
2019年11月18日、日本看護協会
『2018年度「ナースセンター登録データに基づく看護職の求職・求人・就職に関する分析」結果』
※2
公益財団法人日本訪問看護財団
『訪問看護がつくる地域包括ケア~データからみる「訪問看護アクションプラン2025」の今~』
※3
公益財団法人日本訪問看護財団
『令和2年度日本訪問看護財団事業のご案内』
訪問看護師の仕事内容とは?
医師が訪問看護を必要とした方に対して、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士等がその指示のもと介護を要する方のご自宅を訪問し、療養上、必要なお世話や診療補助を行います。
対象者は要介護1~5の方、もしくは特定疾病が原因で介護を必要とする方です。
退院後、自宅での医療管理が必要な場合や療養生活で補助が必要な場合に利用されます。
- 利用者の健康状態の管理(バイタルチェック、病状の観察、精神面でのケア等)
- リハビリテーション(関節の硬化防止のための運動、歩行、排泄などの日常生活の訓練、外出、レクリエーション)
- 治療を促進するための看護(医療機器・器具の管理、服薬指導、主治医の指示による処置や検査等)
- 日常生活・健康管理などに関する相談
- 終末期の看護(痛みの緩和、ご本人・家族の精神的支援、看取り体制についての相談等)
訪問看護師の働き方とメリット・デメリット
訪問看護師のメリット
・基本土日休み
・残業が少ない
・夜勤なしでも給与が高い
・訪問看護師としてキャリアアップができる
・患者さんに寄り添った看護ができる
・小規模事業者の場合、経営が不安定になる可能性
訪問看護師のデメリット
・天候に関わらず、通わなければならない
・患者さんの家が汚ないことがある
・オンコール対応がある
・教育・研修が整っていないことがある
・医療処置スキルが身につかない
訪問看護師は訪問看護ステーションに所属して働くことになります。
訪問看護ステーションの所長は通常看護師であり、その所長のもと訪問先を受け持ち、訪問して看護を行います。
所長が看護師ということで、看護に理解があると考えがちかもしれませんけど、採算などを考えて経営をするわけですから、理想論だけでは務まらないところがあります。
小さな訪問看護ステーションがほとんどで、多くの場合、女性ばかりということもあり、人間関係は重要です。
訪問先に行ってしまえば、職場の人間関係は気にならないかもしれませんが。
職場の人間関係だけではなく、訪問先の家族との人間関係もあります。
病院などに比べ、家族との関わりが密接です。
たとえば、訪問看護ステーションあいここでは、スタッフ(看護師)が7~8名がローテーションを組んで、24時間365日連絡が取れるよう態勢をとって、患者さんの生活を支えています。
いろんな家族がいますので、その中に入って行き人間関係を築くことは結構大変かもしれません。
家族内も仲良し家族ばかりとは限りませんので、その点も気をつかうところです。
在宅している家族が違うと、この人はこういったけれど、この人はこういったみたいな感じで、誰のいう事を聞けばよいのよ、ということを思うこともあります。
訪問看護師の一日のスケジュール
訪問看護師に興味があると言う方の中で「訪問看護師の1日の仕事のスケジュールはどのような感じになっているの?」と疑問に思っていると言う方もきっといらっしゃると思います。
そんな方に対して、訪問看護師と言う仕事の1日のスケジュールはどのようなものなのかと言うことや、訪問看護師の仕事内容はどのようなものなのかと言うことについて簡単に説明していきたいと思います。
8:50 出勤 | 訪問看護は看護師や准看護師、保健士や助産師などと言った様々な職業の方が属している訪問介護ステーションと言うところから仕事が始まります。 |
9:00 ミーティング | 朝の朝礼を含む全体のミーティングから始まることが基本です。 その際に夜勤がある訪問介護ステーションであれば、その夜勤からの引き継ぎや申し送りなどがあります。 その引き継ぎや申し送りなどを受け、利用者に対しての支援や看護を行うことになるのです。 |
9:30 医師、ケアマネジャー、患者さんとの連絡調整 | 朝からヘルパーやケアマネージャー、利用する利用者さんから電話がかかることも稀ではありません。 皆さんが動く1日の最初は慌ただしく始まることも多いのです。 |
10:00 訪問看護へ | そのようなミーティングが終わった後は各々の担当している利用者さんの元へと出発することになります。 自宅に出向いて後はその方の日常生活のケアやお手伝いをすることとなり、またメディカルチェックやバイタルチェックなどを行います。 午前の訪問は2軒でした。 |
12:30 事務所に戻る | 一旦、事務所に戻って、昼食、休憩、そして午後の準備をします。 |
14:00 再び訪問看護へ | 午後の訪問も2軒でした。 通常、4、5軒訪問します。 |
16:30 事務所に戻る | 訪問介護ステーションへと戻り、先ほどと同じような引き継ぎや申し送り、ミーティングなどを行って1日の業務が終了となります。 |
17:30 帰宅 | やりがいを感じることができますし、自分の働いた分に対する報酬や対価もしっかりともらえる仕事になります。 |
訪問看護師の給与・ボーナスは多い?
全国の看護師の平均年収は約483万円ですが、訪問看護師の給与は一体いくらくらいなのでしょうか?
訪問看護師の給与に関しては様々な資料がありますが、政府のデータがありませんので、民間のデータを参考といたします。
医療介護サービスの看護師の常勤で最も給与が高いのが訪問看護(28万6430円)で、以下サービス付き高齢者住宅(27万1229円)、有料老人ホーム(26万9686円)と続きます。
ボーナスを含めての年収の平均は、400万円~450万円だと推測できます。
夜勤なし、残業なしの日勤だと考えれば、適正な金額だといえるでしょう。
訪問看護師のエピソード
訪問看護の面白さはいろんな家族像や生活歴に出会えること
(福島県のMさん、40代前半・女性)
最終学歴:専門学校卒
転職回数:3回
年収:350万円(一般病院)→ 350万円(訪問看護ステーション)
訪問看護師:11年目~15年目
1週間考えて、訪問看護ステーションへの転職を決めました。
日勤で深夜入りといった勤務は、子育て中は無理だと考えています。
非常勤で契約時に祝日も休みとすれば問題ないでしょうが、常勤で祝日は休みということはあり得ません。
そのため子育て中、祝日をどのように乗り切ろうか頭を悩ませることが失敗だと思っています。
食べたごみはもちろん、排せつ物などもそのままになっているようなごみ屋敷に訪問し、汚さと臭いが半端ない状況でも家族二人がひっそりと生活しているところに驚きました。
もともと病棟勤務の時には、小児病棟にいたこともあり、訪問看護でも小児にかかわっていきたいと思っています。
また理想の訪問看護師像としては、今の所長が理想です。
いつも利用者を第一に考え行動するところが尊敬できるところです。
人それぞれ家族背景も違い、考え方も違う。
いろいろな家族像や生活歴があるので、本当に奥深い。
それが訪問看護師の面白さ、魅力だと考えています。
どんな家でもその人の生活があるとすべてを受け入れかかわることができるような人が向いていると思います。
利用者さんの機微やご本人の周りの方々とのつながりを実感できる訪問看護師
(東京都のSさん、20代後半・女性)
最終学歴:大学卒
転職回数:1回
年収:300万円 → 280万円(介護施設)
訪問看護師:1年目~2年目
訪問看護を通じて、人生の最後をしっかりサポートできたらと思いました。
しっかり時間をかけて接することができるようになったこと。
訪問看護師は利用者さんの気持ちを汲み取れる人が向いている
(沖縄県のOさん、30代前半・女性)
最終学歴:専門学校卒
転職回数:1回
年収:430万円(総合病院) → 380万円
訪問看護師:2年目~3年目
いざ、転職活動をしていると色々な求人がありどれも魅力的でとても迷ったのですが病院内でしか看護をする機会がなかったので。
病院というのはどうしても規則があり、それに縛られて毎日過ごさなければいけません。
家庭だと、ありのままの姿で生活している背景を見ることができるのでとても楽しくお仕事をさせていただいています。
生前、「最期は自宅で・・・」と希望していた患者さんがいたのですが、最後の苦しい姿を見ていた家族から「救急車を呼んで病院に搬送すればまだ助かるのではないでしょうか?」と問い詰められたことです。
正直、これまでは業務に慣れる・こなすことでいっぱいいっぱいだったので今後はその人が「らしさ」を最大限に生かすことができるような関わり方をしていきたいと思っています。
病院では見ることのできない表情を家庭だとたくさん見ることができます。
病院のように常に関わることができる訳ではないので、限られた時間で利用者さんが何を思い、どうしてほしいのかを汲み取ることができる看護師が訪問看護師として向いていると思います。
『訪問看護師の転職 訪問看護ステーションでの働き方』のまとめ
- 訪問看護ステーションの求人倍率は2.91倍で施設種類別の中でも最も高い。
- 全国の訪問看護ステーション数は10,577ヵ所、訪問看護を実施する病院・クリニックは1480ヵ所。
- 訪問看護師は2025年には12~15万人必要と試算されている。
- 訪問看護師のメリットは土日休み、夜勤なしで残業が少ないが、給与が良いこと。
- 訪問看護師のデメリットは天候に関わらず通う必要があり、オンコール対応があること。
- 訪問看護師は利用者やその家族に寄り添った看護ができる。