看護師は常に人手不足?データから読み解くナースの求人状況

看護師不足と求人倍率

看護師は常に人手不足?データから読み解くナースの求人状況

最新の統計データから読み解く看護師の求人状況を誰でも理解できるように解説しました。

常に看護師不足か?その答えです

看護師は常に人手不足か?厚生労働省やナースセンターのデータ資料をみる限り、常に看護師不足であることは間違いありません。

根拠として、以下に看護職員の求人倍率の統計をあげます。

全国平均で厚生労働省の有効求人倍率は2.31倍(※1)、ナースセンター登録データの求人倍率は2.36倍(※6)です。

ナースセンターの都道府県別有効求人倍率

これは一般転職含む平均有効求人倍率(2020年3月時点で1.39倍)と比較すると高い水準にあります。

ただし、地域格差が存在しています

あと、有効求人倍率が高い=人口10万人当たりの就業看護師数が少ない、というわけでもありません。

看護師不足を図る指標には、「有効求人倍率」と「人口に対する看護師数」の2つがあることを頭の隅に置いておくとよいでしょう。

労働市場からみる看護師不足

看護師の有効求人倍率は全国平均で常に2~3倍の高水準で推移してきました。

2020年の看護師、准看護師、助産師、保健師の有効求人倍率は2.31倍(※1)です。(ちなみに全職業の平均有効求人倍率は1.39倍)

つまり1人の看護師に対して、2つ以上の病院(クリニック、介護施設他)が募集をしている状況と言い換えられます。

そうとはいえ、ここ数年の看護師の有効求人倍率は安定してきているといえます。

なぜなら、2015年1月時点の東京、神奈川、埼玉、千葉の看護師・准看護師の有効求人倍率は4倍(全国平均2.98倍)(※2)だったからです。

看護師の有効求人倍率の地域差や調査方法によるバラツキはありますが、やはり全国平均では2~3倍という数値が導き出せます。

看護師の転職事情

地域差のある看護師不足

まずは最新のデータ(2018年12月末時点(※3))より、人口10万人当たりの看護師数を見てみましょう。

人口10万人当たりの就業看護師数

【看護師数ベスト5】

1位 高知県 1,511人
2位 鹿児島県 1,394.3人
3位 佐賀県 1,335.4人
4位 長崎県 1,319.2人
5位 熊本県 1,309.7人

【看護師数ワースト5】

1位 埼玉県 693.6人
2位 千葉県 722.7人
3位 神奈川県 738.4人
4位 茨城県 765.5人
5位 東京都 792.3人

(全国平均 963.8人)

この結果を見ても分かる通り、地域によって看護師数に大きな差があることが分かります。

この結果通りに実際の看護師求人の数が連動するわけではありませんが、相関性がみられることは推測可能です。

一般に看護師の数が西高東低になるのは、明治維新以来の医療政策が遠因となっています。

これは医師数、病院数など医療関係者養成機関の偏りと見事に一致するのです。

【戦前までの官立の医学部数】

3校:九州
2校:近畿、関東
1校:中国、北陸、東海、甲信越、東北、北海道

人口比からみれば、現在においても明らかに九州地方が多く、関東地方が少なくなっています。

つまり看護師に地域差があるのは、医師や看護師など医療従事者の養成学校の数に比例しているといえるでしょう。

解消されつつある?看護師不足と2025年問題

データで有効求人倍率の推移を見る限り、看護師不足は解消されつつあるようにみえます。

しかし、厚生労働省が2019年9月30日に発表した推計によると看護職員(看護師・准看護師・保健師・助産師)は、団塊の世代が後期高齢者となる2025年に約6~27万人の看護職が不足するとしてます。

看護師不足が深刻化しそうな地域は、以下の通りです。

1位 神奈川県 3万2053人(72.6%)
2位 大阪府 3万6725人(74.8%)
3位 東京都 4万2064人(77.0%)
4位 埼玉県 1万3307人(85.5%)
5位 千葉県 8856人(88.8%)

あくまでも厚生労働省による推計ではありますが、上述の地域による看護師不足のワースト5のうち茨城県以外の神奈川県、千葉県、埼玉県、東京都は、2025年時点でも看護師不足が解消されていません。

特に都市部での看護師不足は深刻です。

そのため、厚労省は新規の看護師養成、潜在看護師の復職支援、地域偏在解消の対策を検討しています。

日本の人口の1/6が75歳以上となり、医療・介護など社会保障費が増大することは既に知られており、数年前から対策が練られてきましたが、それでもなお、看護師をはじめとする医療従事者が不足するのです。

2025年には地域包括ケアシステムが構築されており、在宅医療、在宅看護が普及していると考えられます。

現在の看護師の8割は病院、クリニック、診療所での勤務ですが、2025年には訪問看護ステーションや老人ホームなどで働く看護師の割合が増えていることは間違いないでしょう。

『看護師は常に人手不足?データから読み解くナースの求人状況』のまとめ

データから読み解くナースの求人状況のまとめ
  • 看護師は人手不足の状況である(2020年3月時点)が、地域格差が存在する。
  • 特に東京、神奈川、埼玉、千葉、茨城など関東地方で看護師が不足している。
  • 看護師が不足するのは明治維新後の医療政策に起因する。
  • 団塊世代が後期高齢者になる2025年にも東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪など都市部で看護師が足りない。
  • 厚生労働省は2025年に向けて看護師の養成・復職支援・地域偏在解消を検討している。
【参考資料】
※1
『一般職業紹介状況(平成32年4月分)について』厚生労働省

※2
『一般職業紹介状況(平成27年1月分)について』厚生労働省

※3
『平成30年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況 』厚生労働省(令和元年9月4日)

※4
『都道府県 人口・面積・人口密度ランキング』(2019年10月1日現在の自治体構成)を元に計算

※5
『第11回看護職員需給分科会』厚生労働省(令和元年9月30日)

※6
『第12回看護職員需給分科会』厚生労働省(令和元年10月21日)

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